日蓮正宗美畑山清涼寺 千葉の清涼寺 法華講ホームページ 千葉県千葉市花見川区畑町

日蓮正宗美畑山清涼寺は、千葉県千葉市花見川区にある日蓮正宗の寺院です

〒262-0018 千葉県千葉市花見川区畑町2010番地 Tel.043-273-3987
今月の指針 「蜘蛛の糸」

今月の指針 「蜘蛛の糸」

 ある時 釈尊 が、極楽の蓮池に浮かぶ蓮葉の間から、水面下に深く広がる地獄の様子を御覧になると一人の男の姿が目に止まりました。
それは、悪事の限りを尽くして地獄に堕ちて藻掻き苦しむカンダタの姿でした。
しかしそんな男でも、たった一度だけ一匹の小さな蜘蛛を見つけて踏み殺さず、「待てよ、これも小さな命」と逃してあげたことがありました。
釈尊は、その僅かな善行の報いとして地獄の苦しみから救い出してあげようと、一本の蜘蛛の糸を地獄へ下してあげたのです。

 遠い天空からゆっくりと下りてくる一筋の細い蜘蛛の糸。それを目ざとく見つけたカンダタは、藁をも掴む思いでこれに縋りつき、夢中で上へ上へと昇っていきました。
血の池は遥か下方に沈み、針の山もだんだん小さくなっていきます。

 「しめ、しめ、意外と簡単に脱出できるかもしれない。」などと、虫のいいことを考えながら足もとを見ると、糸の先には、まるで蟻の行列のように無数の罪人が一緒にのぼってきているではないか。
こんな細い糸が、その重さに堪えられるはずがない・・・。

 もしこの糸が切れたら、もろともに地獄へ逆戻ることになってしまう。
そう考えると、とっさに「こら罪人ども!この糸は俺のものだ。
最初に掴まったのは俺だ、降りろ!みんな早く降りろッ!」と、喚いたのです。
その瞬間、糸は「プッツーン」と切れて、独楽のようにくるくる回りながら瞬く間に暗闇の中へ堕ちていったのでした。

 一部始終を御覧になっていた釈尊は、悲しそうな御顔をなさりながら、
「無慈悲とはこういうもの。げに怖ろしきは慳貪の罪!」と、静かに呟いたのでした。
   (出典:芥川龍之介『蜘蛛の糸』)

 宗祖日蓮大聖人は、
「一切衆生の同一の苦は悉く是日蓮一人の苦なりと申すべし。」(『諌暁八幡抄』新編1541頁)
と、順逆二縁の衆生を救う広大無辺な大慈悲の御境界を披瀝されています。
毒気深入した末法の衆生をいかにして五濁の苦しみから救い出すか、その御心中はつねにとめどなく甘露の涙が流れていたのです。

私達は、その大慈大悲に浴して今を生きています。
不知恩の誹りを受けないために、慳貪の罪を恐れ、いよいよ報恩感謝の炎を燃やして、自行化他の信行に徹することが大切です。

清涼寺 寺報 「従藍而青」
今月の指針 指導教師 石橋頂道 御尊師
2022年7月1日号より

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