日蓮正宗美畑山清涼寺 千葉の清涼寺 法華講ホームページ 千葉県千葉市花見川区畑町

日蓮正宗美畑山清涼寺は、千葉県千葉市花見川区にある日蓮正宗の寺院です

〒262-0018 千葉県千葉市花見川区畑町2010番地 Tel.043-273-3987
今月の指針3月号「鬼子母神」(きしもじん)

今月の指針3月号「鬼子母神」(きしもじん)

 釈尊布教の主舞台となったインド・王舎城(おおしゃじょう)。そこに夜な夜な現れて、人の子をさらっては食い、わが子にも食わせて喜ぶ女の姿がありました。
人々はこれを鬼と呼び、五百人もの子供を産んだことから鬼子母神と呼んで恐れました。最愛のわが子を奪われた人々の悲しみは計り知れません。

 これを憐(あわ)れんだ釈尊は、ある日、鬼子母神の留守宅から五百番目の愛児を鉄鉢で覆(おお)って連れ帰りました。
出先から戻った鬼子母神は、最愛のわが子がいないことを知るやいなや、気が狂わんばかりに泣き叫びながら国中を探し回り、探しあぐねた末に釈尊に救いを求めたのです。

 「五百人のなかのたった一人ぐらい、どうってことないではないか」と、仏は優しく問いました。
「とんでもありません!どんなに大勢いたって可愛さに変わりがありません。もしこの子が見つからなかったら・・・。」と激しくかぶりを振って泣き崩(くず)れたのです。

 「たった一子でも失う悲嘆は、はかり知しれないものなのだ。僅(わず)か一人、二人とはいえ、かけがえのない子供を失った親の悲嘆がわかるか?」と、諄々(じゅんじゅん)と諭(さと)しました。
釈尊が衣の袖から愛児を引き出して返してあげると、奪うように受け取った鬼子母神は狂喜乱舞、その瞬間ハッと我にかえり、長い迷いから目が覚めて改心したのです。

 鬼のような女性にも強烈な母性は具わっています。今仏縁に触れて鬼性が消え、餓鬼界に具わる仏界が輝き、やがて五戒を受持する正法守護の善鬼となったのです。
御本仏大聖人は、三大秘法の御本尊に諸天善神の一つとして、その子・十羅刹女とともに勧請し、鬼子母神は今 末法救済の一翼を担っています。

 人は皆、親を選んでこの世に生まれることはできません。だからなおのことその因縁を大事にしなければなりません。
『刑部左衛門尉女房御返事』(ぎょうぶさえもんのじょう にょうぼう ごへんじ)に、
「親は十人の子をば養へども、子は一人の母を養ふことなし。」(新編1504頁) と。
限りない無償の愛、それに対する孝養心の乏しさを厳しく指摘されています。
三月は春彼岸、父母孝養の絶好の機会です。
『上野殿御返事』云く、
「父の恩の高き事須弥山も猶(なお)ひき(低)し。母の恩の深き事 大海還(かえ)って浅し。」(新編922頁)

 山より高く海より深い両親の大恩に思いを馳せて、孝養を尽くし報恩の誠を捧げたいものです。先立った親には妙法の題目を認(したた)めた塔婆を供養し、健在な親には題目の功徳を手向けて健康長寿を祈る、これに過ぎる孝養と報恩はありません。
最善の信心を持(たも)って最高の人格を磨き、人の道を弁(わきま)えて更なる努力精進を重ねてまいりたいものです。

清涼寺 寺報 「従藍而青」
今月の指針 指導教師 石橋頂道 御尊師
2024年3月1日号より

«